ポカリの日記  タエコ・メッツラー
恐ろしかったこと!(4)
日本は医学の上では後進国なんだそうだ!
今は元気にしているからね!
 その日の夜、ルクの主治医が来て「今日ちょっとトラブった、って聞いたんです。
なんか採血にすごい時間がかかっちゃったって。。

 そうなんです、日本では親には出て行ってもらうんですよね。その理由は、採血の時に母親が近くにいるのに助けてくれないとなると、子供は母親にたいして不信感を抱く、あるいは絶望してしまうだろう、というのが日本の言い分なんですよ。

 でも実はぼくはこれは建て前だと思うんですよ。それで本音は、子供、特に赤ちゃんの採血はすごく難しいんですよ。赤ちゃんって太ってるから血管が見えないし、血管が細いですから針をうまく入れるのがすごいたいへんで、それで失敗する事がよくあるんですが、そんな時に親が横にいると採血する者が緊張してしまって、何回も失敗してしまったりするんです。

 1回でうまくいくといいんですが、2回3回となると親のほうもだんだん怒ってきますからね。でも逆に親に見ていてもらったら良かったのになあ、って思うこともありますよ。だってこっちは血管に針を入れるのに失敗しないようにする為にとても慎重になるんです。
だから針を入れる以前にかなり時間がかかってしまうんです。すると子供はその間ずっと泣いてますから、見てないで泣き声だけ聞いている親は子供が何回も何回も注射器で刺されて泣いていると思って、怒る人がいるんですよ」、と話してくれた。
 
 私は日本のやり方は閉鎖的でいやだなあ、っと思ったけれど、少なくともこのお医者さんは正直に本音を話してくれたので、もういいや、と思った。

 その後お医者さんはアメリカと日本の違いについていろいろ話してくれた。アメリカでは医者が診断した後、治療法や薬を決める時にすべてデータで決める、というのだ。そのデータを出すために、たくさんの研究がなされ、その証拠を実証するために多くの論文が書かれるのだそうだ。その研究の成果がエビデンス(証拠)と言われて、そのエビデンスにもとづいたデーターやチャートによって、治療法も薬も決められるという訳だ。だからアメリカのどの州においても医者の診断が同じだと、治療法は同じだということになる。例えば、血圧が高くて治療が必要な場合、それぞれの年齢と血圧に対する治療法や薬が、ハンドブックにすべて記されている、というのだ。

 日本はそのアメリカのデーターや論文は読むし、参考にするけれど、それではあまり判断しないというのだ。医者の経験やその時の状況に応じて診断が下されるのだそうだ。だから日本の場合は診断が同じでも、医者によって治療法が違って来る場合が多々あるのだという。だからそのお医者さんが言うには、日本は医学の上では後進国なんだそうだ。

 えーそれはないやろー経済大国の日本が後進国なんて、と不思議に思った私は、後で友人の医者に聞いてみたが、やはり一般的には日本は医学上では後進国なんだと言われているそうだ。

 でも日本側の言い分は、人の体質はそれぞれ違うからデーターでは一概には決められない、何でも科学で判断できるものではない、という事らしい。
                                        (つづく)