ポカリの日記  タエコ・メッツラー
カイリの日本の幼稚園(3)
日本ではあたりまえかもしれないが、アメリカでは・・・
根っからの関西人なんですヨ!
ぼくも、うたったりおどったりしたよ!
 おゆうぎ会の日がやってきた。大きな区民ホールの舞台でカイリがお友達5人と踊る事になっていたからドキドキした。というのはカイリはハーフだが性格は根っからの関西人なので、うけをねらって急ににげていったり、機嫌が悪い時は泣いて何もしなくなる事があるからだ。

 最初にクラスのみんなでクリスマスソングを歌った時はカイリもちゃんと歌ていたので私はほっとして、そのあとカイリのドレスをもって行って、着替えさせてやらないといけない事なんてすっかりわすれて、あほみたいに他の学年の子供たちがうたっているのをビデオにとったり、見たりして笑っていた。

他のお母さんが、「控室でカイリちゃんが『お母さんが来ない』って泣いてますよ」、と知らせてくれて、ようやく気が付いてあわてて行ってみると、他の子たちはみんな着替えてならんでいて、カイリが一人で泣いていた。舞台でもずっと泣いていたらどうしようと思ったが、助かったことに本人はうれしそうに踊ってくれたのだ。

 他の学年の子たちもピアニカや笛やハーモニカなどで合唱したり演劇をしたりしてとてもじょうずだった。マークも「なるほど、日本のチームワークがいいのはこんな小さい時から訓練してるからなんだね」、と関心していた。

   そういえばカイリの幼稚園では参観日が何回かあって見ていると、みんな先生のピアノがなるとちゃんと起立して、礼をして、着席したり、朝の会では班にわかれて班の当番が班員の名前を呼び?ばれた子は手を上げて「はい」という。日本ではあたりまえかもしれないが、アメリカでは皆が一緒に起立したり、礼をしたりしないし、もちろん班なんてない。

 それにアメリカは幼稚園が1年しかない。トミーはミシガンでデイケアーに行っていたけれど、そういえばみんなで一緒に何かする、ってことはなくて、みんなばらば
らにかってに遊んでいたっけ。
 日本ではトミーはまだ2才だったけど、カイリの幼稚園に週に一回行って、トミーと同じ年の子たちとみんなで体操したりおどったり、歌をうたったりしていた。

 ところでトミーは家ではおしゃべりなのに、外に出るとはずかしがりやなので、この幼稚園に毎週行ってもあまり楽しんでないようだった。先生に呼ばれたら他の子たちはみんな返事しているのに、トミーだけがはずかしくて何も言えないし。。ところが今アメリカのテキサスに来てみて、トミーは最近東京の生活を思いだし、あの東京のお家に帰りたい、あの幼稚園に行きたい、と言って泣くのだ。カイリもおゆうぎ会のビデオを見て、目に涙をうかべていた。仲が良かったお友達の事を思い出したのだろう。

 やっと慣れてきて楽しかった東京の生活も、たった1年で終ってしまった。。私は「カイもトミーも日本を去ってしまって、幼稚園ともお友達とも離れて本当にかわいそうだったけど、でもまたアメリカで楽しい事がいっぱいあるからね」と言った。子供をなぐさめているやさしい母の言葉に聞こえるけれど、実は自分に言っている事に気付いた私だった。

                                        タエコ・メッツラー