宮津 災害 ボランティアレポート
私はてっきり、もう台風から10日も経っていることだし 一人暮らしの老人宅を訪問し、家中、そして家中の家財道具を拭いたり、畳を上げたりするのが仕事かと思っていました。
  2004/11/04   

土石流が流れて家がつぶされた現場。ボランティアの仲間も立ち尽くしています。
土が家の間を埋めた状態です。 この土をひたすら前にかきだしました。帰りにはかなり低くなり 隣の家の雨戸より低いラインまで除去しました。(完全除去はこの日はできなかったけど。)
私達が担当したHさん宅の玄関。これは途中の段階です、最初、真中上のうっすらと土がついてるラインまで土に埋もれていました。最終的には戸の前は土を完全除去しました。

 

森本 泰子さん

 台風の爪あと:
10月20日の台風23号の被害を受けて京都府の福祉協議会から、被害の大きかった宮津 市や舞鶴市に京都駅からの無料日帰りボランティアバスが出ていることを知って早速 10月30日、参加してみることにしました。
            
 私はてっきり、もう台風から10日も経っていることだし 一人暮らしの老人宅を訪問し、家中、そして家中の家財道具を拭いたり、畳を上げたりするのが仕事かと思っていました。

 宮津に到着後10人程度のグループで、Hさん宅へのボランティアが決まり、地図を見ながら現地に向かいました。道中には土石流の現場があり、その近くの家は川のように一気に流れ落ちた土石の直撃を受け跡形もなく破壊されていました。

 地元の人によるとこの地区では車が土石流により屋根の上に押しやられ1名の方が亡くなられたそうです。

 そしてHさん宅に到着すると家はもともと道より下の位置にあるのですが、道は土石流の通り道になった為、家は直撃は免れたものの玄関のドアの半分より高い位置まで土に埋もれており、玄関は開けれない状態、また隣の家との隙間も約1軒家が造れるくらいのスペース(約3M奥行き10M位)があるのですがそこも同じ高さの土で埋め尽くされており、地元の人の説明によるとHさんは土石流の直後 裏側の窓から救助隊によって救出され、今は避難所に居られるとのことでした。私が想像していた、家主の指示を受けながら家の掃除を手伝うなんてレベルでは全然なく、土砂に埋もれて入れなくなってしまった家をとりあえず土から掘り起こして入れるようにする、という段階だったのです。

 いったい何から始めればいいのかわからない状態でしたが、時間も限られているし、とにかくあるのはスコップと自分達だけ。とにかくこの家に入れるようにすべく、戸の前と隣家との間の隙間の土砂をスコップでかき出し始めました。1時間ぐらい手探りの状況でやっているとブルドーザーが巡回してきて、道の周辺まではブルドーザーで対応できるが家の間の奥まったところや細かいところができないのでとにかく奥の土砂を少しでも前の方にかき出していってほしいと言われました。

 それから私達はとにかく人海戦術でとにかく掘りまくりましたが、土は上の方は砂のようで軽いけど少し深いと水を大量に含んで重い泥と化しているし、土の中にはかなり大きな木や、また金属製の物干しなどが倒れて埋もれていました。また隣家との隙間にはサクラの若木が植えられていたようでしたが、これも土に埋もれており、途中でどういう状態になってるのか、枝が非常に作業の邪魔になるので木を折った り切ったりしながら作業を進めざるをえませんでした。

 このような手探りの状態では有りましたが、昼過ぎには玄関前の土砂を除去することができ、10日ぶりにドアを開けることができたのでした。ドアを開けてみると、家の外ほどではもちろんなかったのですが、それでも家の中の一面に土が5−10CM積もっていました。私は避難所に居る家主は、家を10日ぶりに開けれたことには喜んでくれるだろうが、土だらけの座敷を見たらまた涙と思い複雑な気持ちになりました。

            振り返って:

このような状況で私達は残念ながらお手伝いしたお宅の人から直接お話を聞く機会はなかったのですが、近くの人によると土石流の前兆の音など、なにも誰も聞かなかったそうです。ほんとうに一瞬のような出来事だったということです。ボランティアを終えて地区を見て改めて被害の大きさにびっくりしました。
以下 気づいた点をかいつまんで書いてみたいと思います。

現場は重機しか対応出来ないところ、またマンパワーでしか対応できないところがある。
今回のように被害が甚大だとまず重機が入れるようになるまでまず時間がかかり、その次段階としてボランティアの安全が充分確保されるまでにまた時間がかかり、日数がたっても外部のものが思っているほど作業が進んでなかったりする。(ので日がだいぶ経っていても募集がある限りボランティアに参加する価値は絶対あります。)
土砂は下水などで汚染されている可能性があるので軍手など着用し充分な手洗いを欠かさない。(現地では水も貴重な為、消毒できるウエットティッシュが便利。)
不慣れな土地であり危険な場所も残っていることからボランティア中は無理をしない。(最低限の余裕を持ってボランティア、自分自身の安全の確保)災害は突然やってくるし次は自分が助けられる側になるかもしれない。
 

ということで、もちろんパワーショベル、ブルドーザーの威力はすごいですが人力でのみしか対応できない場所もかなりあることがわかったし、私が参加したケースなどはスコップでの土砂除去でとにかく体力勝負なので地元の人ばかりでは疲労困憊してしまうし、市外の人でも新しい人がどんどん入れ替わり交代で参加することによって地元の人を元気づけお互い励まし励まされ協力して更にがんばることができたと思いました。また多くの地元の方に感謝の言葉を頂いて逆にこちらが元気をもらって現場ではとても有意義な一日を過ごすことができ、これからもこのような機会があれば是非参加していきたいと思いました。

また このような災害はないにこしたことは無いけど、残念ながら地球温暖化も進んでいる昨今、日本に住んでいる以上これからも台風や地震とまったく無縁というわけにはいかないだろうし、いつ自分がボランティアされる側になるかもしれないし、災害とはどういうものか、普段から知っておいた方があらかじめ対処も考えられる(まず知る)という意味でも、ボランティアは他の人達の為だけでなく自分にとっていい経験にもなり、何より少しでもお役に立てるので時間都合があえば本当にお奨めします。(しかしもちろん自分の体調が万全である時に参加しましょう。災害地の環境は厳しいし、かえって地元に迷惑をかけてもいけないので。)

その方法として今回のようなボランティアバスは、やりたい気持ちはあってもどこに申し込んだらいいかわからない地元でないものでも気軽に無理なく参加できる非常にいいなと思いました。

11月4日現在、台風23号の被害に関しては市外からのボランティアを募集しているのは豊岡市のみになりましたが これからも福祉協議会のHPでボランティア募集などの情報が出ているのでその都度チェックしていきたいと思いました。一日だけの体験ですが皆様のご参考になれば幸いです。 (おわり)

兵庫ボランタリープラザ
https://www.hyogo-vplaza.jp/etc/pac_saigai.html

京都府社会福祉協議会

https://www.kyoshakyo.or.jp/


                                        森本 泰子