生まれて初めの“白夜”経験。
なかなか雰囲気のある冒険観光船だ。
結局、乗船客は船からは離れられなかった。
教室の内部。西洋スタイルのゆったりした教室だった。

 北極圏の長い1日が過ぎ太陽が西の空に沈んでいこうとしている。時計を見ると夜の十時を指している。しかし、いくら時間が経っても20度くらいまでの高度に沈むのだが、それ以上沈ずまず西の空から東の空へ平行移動していき、我々の感覚で言うところの夜明け時間から東の空に向かって日が昇っていく。太陽が頭の上で大きな円を描いて回っているのだ。ここ、北極圏にいると、24時間ずーっと太陽の動きを目で追いかけることが出来る。これが北極圏の“白夜”と言う僕にとっての夢物語だったのだ。

 着いた日は、時間の観念がつかめなかったのが二日目になると太陽の位置でどんな時間帯にあるのか、少しは理解できるようになってくる。
日本でなら日の出前の時刻の頃、マッケンジー川を見つめていると川下の北極海の方から一艇の白い船が上ってきた。日本では、まず見かけることのない形の船で、カヌーなどを積み込んだとても雰囲気のある船だ。

 村の人たちは全く興味を示さないのだが、何にでも興味津々の僕は、遡ってくる船をずーっと目で追いかけていた。コースがだんだんこちら側に寄ってきている。船着き場があるんだろうかと船が近づいた所に行ってみると川岸にロープで寄せられているだけで、乗客の人たちは梯子で乗り降りしている、なんともワイルドな状況だ。

 船から下りてくるのは、高齢の夫婦ばかりだ。乗客のドイツ系カナダ人のご夫妻に話しかけると、カナダトロントから一ヶ月くらい掛けて北極海から、このマッケンジー川を巡りイヌイットやインディアンの集落を見物しているようだ。ディズニーランドの外輪船でインディアンの村を見て回る、あの雰囲気そのままのクルージングが現実の世界で行われているのだ。

 船の乗客達が、僕のことをこの村の人間ではないというのが分かったらしく「ここのインディアンは友好的じゃないのか?」と聞いてきた。今まで立ち寄った村では、船が着くとお土産を売るインディアン達が寄ってきたのに、この村では誰も寄ってこないので気味悪がっているようだ。

この村は、観光客が来るような所ではなく、お土産を作る人や売る人が居なく、観光船や観光客に興味がないだけなのだ。2時間ほど滞在しただけでこの船は舫を解いて川上に向かっていった。
北極圏では、 深夜の時間帯に船が着き、観光客が下船し出航していくと言うのが太陽の下で行われていたのだった。
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